悩みのかんぱんは皮膚に発生する頑固なシミブログ:2015-9-03


母親はぼくが大学受験で上京する時、
三十センチ四方もある巨大な弁当を持たせてくれました。
それは百科事典のような豪華さでした。

ぼくは巨大な弁当に注がれる周囲の客の視線を気にしながら、
フタを少しだけ持ち上げ箸を突っ込み、
わずか三口か四口食べただけで網棚に仕舞い込んだのでした。

恥ずかしさのあまり
駅で風呂敷ごと捨ててしまったぼくは、
今になって、あの巨大な弁当に込められた
母親の計り知れない大きな愛を感じています。

お父さんが始めた商売がなかなか軌道に乗らず、
どんな辛く苦しい思いをしたか、
当時のぼくには想像もつきませんでした。

生意気盛りの反抗期のぼくは、
母親が風呂の燃料用にと魚屋さんからもらった古い魚箱を
リヤカーで運ぶこともせず、斧で割ることもしませんでした。

滞納した授業料を催促するぼくに、
どんな思いで「もう少し待ちなさい」と言ったことでしょう。

通学定期も満足に買えなかった貧乏の中で、
新聞奨学生となって大学に行くと宣言したぼくを、
金銭的援助の出来なかった母親は、
どんな思いで駅のホームから見送ったことでしょう。

ぼくが上京してから服やスナック菓子を送ってくれた時、
一緒に入れてあった五千円札が思い出されます。
毎回判で押したような、
母親の生活上の注意の手紙が思い出されます。

母親の愛をぼくはずいぶん裏切りました。
でも、それでもなお、母親はぼくを愛し続けてくれました。
その愛情の深さに、ぼくはおびえるほどです。

三人の子どものお父さんとなった四十九歳のむすこが今、
泣きながら、鼻をかみながら、この手紙を書いていることで、
父母不孝の何分の一かでも許して欲しいと思っているのです。

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